社保未加入だと現場に入れない!?
加入対象はだれ?
1、あなたの事業所は「社会保険」の加入対象?
従業員数 | 健康保険証関係 | 年金保険 | 雇用保険 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
協会けんぽ | 建設国保 | 市国保 | 厚生年金 | 国民年金 | |||
法人 | 1人以上 | 義務 | 選択可 | 不可 | 義務 | 不可 | 義務 |
社長のみ | 義務 | 選択可 | 不可 | 義務 | 不可 | 不可 | |
個人事業 | 5人以上 | 義務 | 選択可 | 不可 | 義務 | 不可 | 義務 |
1人以上 | 任意 | 可能 | 可能 | 任意 | 義務 | 義務 | |
事業主のみ | 不可 | 可能 | 可能 | 不可 | 義務 | 不可 |
厚生年金+健康保険への加入義務
【事業所は】
①法人である(有限会社・株式会社など・従業員数は関係ありません)
②個人事業所で常時5人以上が従事している
+加入義務はないが従業員の過半数が同意した事業所(任意適用事業所)
【従業員は】
①社会保険適用事業場に常時雇用される正社員
②正社員の所定労働時間のおおむね4分の3を超えて勤務するパートタイマー
+常時501人以上が勤める事業所の場合は別途条件
雇用保険への加入義務
①常時雇用している労働者がいる事業場はすべて加入しなければなりません
②正社員のほか、所定労働時間の2分の1を超えるパートタイマーに加入義務があります。
2、あなたの協力会社は大丈夫?
自社の対応をもちろんですが、協力会社(下請会社)の対応は万全ですか?
協力会社の保険加入状況が適正ではなく、年金部局によって「強制加入(職権適用)」となった場合、最大で2年分の保険料が一度に請求され、事業の継続が困難になってしまいます。
例:従業員5名で2年間社会保険料を遡及された事業所は、請求額がなんと1600万円!
国土交通省「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、下請企業の加入適正化にあたっては、上位企業が責任を負うとされています。
3、外注化すれば大丈夫って本当?
安易な「外注化」が「社会保険逃れ」と判断され、遡り適用される事例があります。また建設技能労働者の処遇改善と生産性向上のために、「重層下請構造の改善」が進められており、原則2次下請まで(設備は3次まで)での施工が目指されています。2次下請業者が職人を外注化した場合は3次となってしまうため、職人が現場入場できなくなってしまうケースが出てきます。
どうすればいいの…?困ったら組合へ相談を
または045-321-5364(月~金9時~17時)へ
どうしたら貰える「法定福利費」
社会保険に加入すると、必要になってくるのが「法定福利費」。
「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」について、事業主(会社)がそのほぼ半額を負担することが法律で定められていますから、「法で定めた福利厚生の費用」という意味で「法定福利費」といいます。
1、請求しなければ貰えない
会社のお金の源泉は現場ですから、工事代金に法定福利費が含まれていなければ、お金の出どころはありません。
国土交通省はホームページなどでも、「法定福利費は最低限必要な原価に含まれる」としており、工事代金の一部として上位会社または施主が支払うべきものとしています。
一方で、法定福利費の額は会社ごとに違うため、実際に負担する事業主でなければ、金額はわかりません。法定福利費は金額が大きく、企業努力だけでは捻出できないため、見積時に本体工事費とは別に明記(別枠明示)または外出し(別枠請求)するなどして、価格交渉時には法定福利費を価格交渉の対象としてはならないこととされています。
法定福利費は「請求しなければ貰えない」が、「請求されれば払わなくてはならない」というのが大原則
法定福利費の支払いを拒否する行為は建設業法違反です。
2、「法定福利費を別枠明記した見積書」とは
法定福利費は月額で支払われるため、現場ごとに請求するためには明確な根拠が必要です。そのために工種ごとに専門工事業団体が策定した見積書(標準見積書などと呼ばれます)などを活用して、法定福利費の金額を明示した見積書を提出しなければなりません。
法定福利費の算出には
①会社が負担した月額の法定福利費を日割りし、現場入場した日数で乗する
②現場入場した労働者の賃金額の合計に、事業主負担分の保険料率を乗する
③実際に現場入場した労働者ごとの事業主負担分を合計する
などの方法があります。
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3、町場仕事でも請求しなければならない?
大手住宅メーカーなどでは、法定福利費はおろか膨大な広告宣伝費すら見積書に明示はされていません。
しかしどのような会社でも法定福利費や経費は発生していますし、工事代金しか会社に入るお金はありませんから、法定福利費や経費は何らかの形で工事代金に含まれなければなりません。
町場では「法定福利費の別枠明示」にこだわらず、そのほかの経費や適正な利益も、工事代金に含んでいかなくてはなりません。無理に経費や利益を圧縮して、会社が倒産してしまったら、一番迷惑をかけてしまうのが施主さんです。
4、建設横浜の「健康保険適用除外制度」を活用すると
建設横浜など建設労働組合が運営している「建設国保」(土建国保・建築国保などとも呼ばれます)は、一定の条件において、厚生年金保険とセット加入することができます(「健康保険適用除外制度」という公式の制度です)。
建設国保と厚生年金保険をセットで加入することで、国民年金より給付額の多い年金制度に加入できるうえに、建設業に特化した健康診断を無料で受診できたり、医療費の窓口負担額の償還が受けられるなど、「今」も「将来」も安心な福利厚生を構築することができます。
Y建設(横浜市)・Y社長
うちは何十年も前から建設横浜の前身の組合に加入して、建設国保と厚生年金のセットで加入してきました。「社会保険未加入対策」が国の主導で進められるようになって、専属外注全員を思い切って社員化して、同じように厚生年金もかけました。上位会社からは「協会けんぽに入りなおせよ」と言われましたが、「うちは建設国保の無料健康診断とか医療費の還付があって、従業員と従業員家族の生活を守ってきた。組合のサポートもあって、ここまで会社が大きくなってきたんだ!」って言ってやりましたら、それっきり。受注も変わらず続いています。社員が定着して仕事に慣れていけばいくほど生産性も上がるので、毎年の賃上げもできています。会社の儲けはなるべくボーナスに使っていますから、役員報酬は何年も据え置きですけどね。
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