社会保険未加入対策が最終局面に突入
社保未加入だと現場に入れない!?

トピックス

1、国土交通省「未加入者の現場入場を認めない」ことを要請

 国土交通省は「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を7月28日に改訂、「平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱とすべきである」としました。
 この「特段の理由」については、

①現場入場時点で60歳以上であって厚生年金未加入の場合(雇用保険に未加入の場合は該当しません)

②伝統建築の修繕などで、その作業員が施工に必要な特殊な技能を有していて、現場入場を認めないと工事の施工が困難となる場合

③その作業員が社会保険への加入手続き中であるなど、今後確実に加入が見込まれる場合
に限定されています。

 つまり平成29年度以降(2017年4月以降)は、「加入するべき保険に加入していない作業員」が現場入場できなくなる措置が拡大していくことになります。

 

2、大手ゼネコン各社・・・1次会社を通じて加入状況確認

 大手ゼネコン各社は1次会社を通じて、2次以下の協力会社の保険加入状況の調査・捕捉を進めています。調査の仕方は、①再下請負通知書と労働者名簿への記載状況でのチェック、②クラウド型安全書類での労働者名簿を使用したチェック、③健康保険証のコピーを提出させたチェック、など様々な手法で確認されています。
 専属性が高いサブコンなどでは、1次・2次・3次の労働者単位での加入状況まで数千人単位で把握しているケースもあります。
 加えて「建設業キャリアアップシステム」(就労履歴管理システム)が本格稼働すれば、保険の加入状況は一目瞭然です。

 

 

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加入対象はだれ

1、あなたの事業所は「社会保険」の加入対象?

 一部の現場などで「2017年4月からは社会保険に入っていないと仕事ができない」と話題になっているようですが、すべての建設従事者が社会保険に加入しなければならないわけではありません。
(1)厚生年金+健康保険への加入義務
【事業所は】
①法人である(有限会社・株式会社など・従業員数は関係ありません)
②個人事業所で常時5人以上が従事している
+加入義務はないが従業員の過半数が同意した事業所(任意適用事業所)
【従業員は】
①社会保険適用事業場に常時雇用される正社員
②正社員の所定労働時間のおおむね4分の3を超えて勤務するパートタイマー
+常時501人以上が勤める事業所の場合は別途条件
(2)雇用保険への加入義務
①常時雇用している労働者がいる事業場はすべて加入しなければなりません
②正社員のほか、所定労働時間の2分の1を超えるパートタイマーに加入義務があります


加入義務の有無

 

従業員数

健康保険証関係

年金保険

雇用保険

協会けんぽ

建設国保

市国保

厚生年金

国民年金

法人

1人以上

義務

選択可

不可

義務

不可

義務

社長のみ

義務

選択可

不可

義務

不可

不可

個人事業

5人以上

義務

選択可

不可

義務

不可

義務

1人以上

任意

可能

可能

任意

義務

義務

事業主のみ

不可

可能

可能

不可

義務

不可

※協会けんぽ加入が義務の場合で、建設国保を選択する場合は一定の条件があります。
詳しくはこちら
※上記で「義務」となっている場合でも、就労時間が短い場合などは、任意となります。

(3)あいまいな例
①法人を名乗っているが誰も雇っていない
 →厚生年金・健康保険に加入しなければなりませんが、雇用保険は対象外
②個人事業で職人を2人、日給・月給で雇っている
 →厚生年金・健康保険は義務ではありませんが、雇用保険は加入義務があります
③法人で一人親方だが、外注職人がいて、日当に消費税を加算して支払っている
 →外注職人が労働者と判断され、社会保険の加入対象とされる可能性があります

 

2、あなたの協力会社は大丈夫?

 自社の対応をもちろんですが、協力会社(下請会社)の対応は万全ですか。もし協力会社の保険加入状況が適正ではなく、年金部局によって「強制加入(職権適用)」となった場合、最大で2年分の保険料が一度に請求されて、事業の継続が困難になってしまいます。(従業員5名で2年分の遡及をされたある事業所では、請求額が1600万円でした)
 また国土交通省「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、下請企業の加入適正化にあたっては、上位企業が責任を負うとされています。


 

3、外注化すれば大丈夫って本当?

 安易な「外注化」が「社会保険逃れ」と判断され、遡り適用される事例があります。また建設技能労働者の処遇改善と生産性向上のために、「重層下請構造の改善」が進められており、原則2次下請まで(設備は3次まで)での施工が目指されています。2次下請業者が職人を外注化した場合は3次となってしまうため、職人が現場入場できなくなってしまうケースが出てきます。

 

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どうしたら貰える「法定福利費」

 社会保険に加入すると、必要になってくるのが「法定福利費」です。「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」について、事業主(会社)がそのほぼ半額を負担することが法律で定められていますから、「法で定めた福利厚生の費用」という意味で「法定福利費」といいます。

 

1、請求しなければ貰えない

 社会保険に加入したからといって、会社にお金が湧いてくることはありません。会社のお金の源泉は現場ですから、工事代金に法定福利費が含まれていなければ、お金の出どころはありません。
 国土交通省はホームページなどでも、「法定福利費は最低限必要な原価に含まれる」としており、工事代金の一部として上位会社または施主が支払うべきものとしています。一方で、法定福利費の額は会社ごとに違うため、実際に負担する事業主でなければ、金額はわかりません。
 加えて法定福利費は金額が大きく、企業努力だけでは捻出できないため、見積時に本体工事費とは別に明記(別枠明示)または外出し(別枠請求)するなどして、価格交渉時には法定福利費を価格交渉の対象としてはならないこととされています。
 したがって法定福利費は「請求しなければ貰えません」が、「請求されれば払わなくてはならない」というのが大原則です。法定福利費の支払いを拒否する行為は建設業法違反です。

 

2、「法定福利費を別枠明記した見積書」とは

 法定福利費は月額で支払われるため、現場ごとに請求するためには明確な根拠が必要です。そのために工種ごとに専門工事業団体が策定した見積書(標準見積書などと呼ばれます)などを活用して、法定福利費の金額を明示した見積書を提出しなければなりません。
 法定福利費の算出には
 ①会社が負担した月額の法定福利費を日割りし、現場入場した日数で乗する
 ②現場入場した労働者の賃金額の合計に、事業主負担分の保険料率を乗する
 ③実際に現場入場した労働者ごとの事業主負担分を合計する
 などの方法があります。

 

3、町場仕事でも請求しなければならない?

 町場仕事で法定福利費を明示した見積書を提出するべきかは、大きな問題です。大手住宅メーカーなどでは、法定福利費はおろか膨大な広告宣伝費すら見積書に明示はされていません。しかしどのような会社でも法定福利費や経費は発生していますし、工事代金しか会社に入るお金はありませんから、法定福利費や経費は何らかの形で工事代金に含まれなければなりません。
 したがって町場では「法定福利費の別枠明示」にこだわらず、そのほかの経費や適正な利益も、工事代金に含んでいかなくてはなりません。無理に経費や利益を圧縮して、会社が倒産してしまったら、将来にわたって一番迷惑をおかけしてしまうのが施主さんです。無理な見積もりをしないように心がけましょう。

 

4、建設横浜の「健康保険適用除外制度」を活用すると

 建設横浜など建設労働組合が運営している「建設国保」(土建国保・建築国保などとも呼ばれます)は、一定の条件において、厚生年金保険とセット加入することができます(「健康保険適用除外制度」という公式の制度です)。
 建設国保と厚生年金保険をセットで加入することで、国民年金より給付額の多い年金制度に加入できるうえに、建設業に特化した健康診断を無料で受診できたり、医療費の窓口負担額の償還が受けられるなど、「今」も「将来」も安心な福利厚生を構築することができます。


 

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社保加入と賃金確保で生産性向上を

 社会保険加入で雇用を安定させて、法定福利費も取引先から確保し、魅力ある賃金水準を確保する。これが建設業の魅力アップの最終目標です。法定福利費を賃下げで確保し、会社の利益もジリ貧では、会社も続かず、従業員のモチベーションも下がってしまいます。
 組合が定期的に行っている大手ゼネコンや住宅メーカーとの交渉でも、「法定福利費はもちろん、魅力ある賃金も正当な原価に含まれる」という企業側の回答が相次いでいます。
 ルール通りの雇用を実現し、魅力ある賃金を獲得すれば、従業員のモチベーションも高まり、会社の生産性も向上します。社会保険や雇用環境の抜本的改善を出発点に、事業を大きくしていきましょう。建設横浜は中小企業の経営を応援しています。

Y建設(横浜市)・Y社長
 うちは何十年も前から建設横浜の前身の組合に加入して、建設国保と厚生年金のセットで加入してきました。「社会保険未加入対策」が国の主導で進められるようになって、専属外注全員を思い切って社員化して、同じように厚生年金もかけました。上位会社からは「協会けんぽに入りなおせよ」と言われましたが、「うちは建設国保の無料健康診断とか医療費の還付があって、従業員と従業員家族の生活を守ってきた。組合のサポートもあって、ここまで会社が大きくなってきたんだ!」って言ってやりましたら、それっきり。受注も変わらず続いています。社員が定着して仕事に慣れていけばいくほど生産性も上がるので、毎年の賃上げもできています。会社の儲けはなるべくボーナスに使っていますから、役員報酬は何年も据え置きですけどね。

 

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資料編

・法定福利費請求の法的根拠はこちら
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